優秀な人材を集めるシンガポールの留学生受入政策の推進と転換

最新のアジアの大学ランキング(THE世界大学ランキング2018)においては、1位にシンガポール国立大学(NUS)、4位に南洋理工大学(NTU)という結果 になりました。資源の少ないシンガポールでは人材を資源と考え、教育に力を入れており、高 度な教育機関を整えているシンガポールには世界中から優秀な人材が集まっています。
シンガポールは1965年の独立以来、国外からの多くの人材を受け入れ、発展をしてきました。1980年代後半から政府は高度人材の受け入れに積極的に取り組むようになり、2002年に発表した「グローバル・スクールハウス」構想では、シンガポールを世界トップレベルの教育ハブにするべく、世界トップクラスの教育機関と優秀な留学生をシンガポールに誘致する計画を掲げました。また、優秀な留学生を受け入れる取り組みだけではなく、その先の就職や定住にもつながるような取り組みを計画的に進めているのも特徴的です。まず、留学生にとって魅力的な都市づくりをするために、企業や観光客、国際会議等の誘致政策に一貫性を持たせるなど、包括的な政策として取り組み、優秀な人材が母国に戻らず、働きたいと思う場所につなげています。さらに、シンガポール政府による奨学金制度も留学生の受け入れを後押ししています。教育省では「Tuition Grant」という学費の補助制度を設けており、シンガポール国民だけではなく、国内の大学や高等専門学校に通う留学生も、卒業後最低3年間はシンガポール国内で就労することを条件に、学費の最大75 %の助成金を受けられます。しかしその一方で、外国からの優秀な人材の受け入れの推進はシンガポール国 民の進学や就労の機会を奪っているという国民の不満をもたらしました。この ため、2011年には留学生の受け入れを制限することも発表されました。 近年、政府はビザの発給条件を厳格化しており、優秀な人材の確保と自国民人 材の活用のバランスをどのように取って行くかがこれからの課題となっています。

(シンガポール事務所所長補佐 中澤)