川崎市がシンガポール政府のAIを活用した先進施策を調査

川崎市は「AI時代の行政戦略」というテーマで、公募職員による政策課題の研究を行っており、2017年12月11日から15日にかけてAIやIoT技術を活用して様々な行政課題の解決に先進的に取り組んでいるシンガポールを調査のために訪れました。
シンガポール事務所では、訪問先の選定やアポ取りの支援等を行うとともに、シンガポールの情報通信メディアを活用したSmart Nation構想への理解を深めるため、川崎市の視察先にも同行しましたので、これらの様子について報告します。

1.クレアシンガポール事務所でのブリーフィング

シンガポール政府は、Smart Nation構想という、情報通信メディア技術の進歩を活用し、国民の生活をより快適に、より豊かにしていくことを目指した国家ビジョンを打ち出しています。当事務所では、シンガポール政府の戦略を理解するための基礎知識や背景を来訪者に知っていただくため、シンガポール及びASEAN地域の概要についてブリーフィングを行いました。主旨として、効率的な運営、迅速な意思決定といったシンガポール政府の特徴は、政府・行政と考えるよりも、1つの大企業であると考えると理解しやすく、AI技術へのシンガポール政府の取り組みもその一例として考えると納得しやすいということをお伝えしました。

2.国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)シンガポール事務所及びNational Research Foundation(NRF)でのブリーフィング

続いて、JSTシンガポール事務所及びNRFを訪問し、シンガポールの科学技術全般に関する概要についてブリーフィングを受けました。ここでは、シンガポールの科学技術政策が5か年計画で進められていること、成果を重視した産業的応用研究が中心で、重点的に研究・開発を進める分野がトップダウンで決められていることなどを学びました。基礎研究よりも、効率的で結果を重視するシンガポール政府の特徴が如実に表れていることが感じられました。

3.DASSAULT SYSTEMES(ダッソー・システム)の視察

シンガポール政府のSmart Nation構想に関する視察先として訪問したこの企業は、Virtual Singaporeというシンガポール全体を三次元(3D)で可視化するプロジェクトを進めており、シンガポール政府と一体となって3Dモデルのシステム構築に取り組んでいます。3Dモデルの構築により、新たな建物を建築する際の影響や問題が発生した際の解決策について、シミュレーションを行うことができます。また、交通量や天候、太陽の位置など新たな情報をモデルに追加することで、実施したい内容に合わせたより複雑で精度の高い様々なシミュレーションが可能となるようです。

シンガポール政府はこのシステムを全ての省庁で横断的に使用できるようにする計画とのことで、1つの成果物を効率的に利用しようとする政府の姿勢が感じられます。

4.NECシンガポール事務所の視察

Smart Nation構想に関する次の視察先として、NECシンガポール事務所を訪問しました。NECシンガポール事務所は1977年に設立されました。NECの製品はチャンギ空港の出入国審査での自動改札システムなど様々なところで使われています。近年では、NECのAI技術を用いてバスの危険運転を予測するモデルが導入され、事故の防止にも役立っています。

今回訪問した2つの企業は、フランス、日本の企業ですがシンガポール政府のSmart Nation構想に貢献しています。こういった外国の企業であっても、優れた技術があり、それに価値があるとシンガポール政府が認めれば容易に、国家のプロジェクトに加わることができます。また他国ではなかなか認められないような実証実験であっても、シンガポール政府は積極的に支援するなど、企業にとってもシンガポールで研究・開発を行うことには大きなメリットがあるようです。今回の訪問により学んだことは、川崎市の政策課題研究に活かされることが期待されますが、当事務所としてもシンガポールの政府機関や民間企業等との新たなつながりが構築でき、大変良い機会となりました。
他の多くの都市においても、情報化技術を取り入れることはこれからの重要な課題となってくると思われます。シンガポールの先進事例を視察したいなどの要望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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