東南アジアは、世界的にも自然災害に対する脆弱性の高い地域です。人口増加、経済発展に伴う沿岸部の都市化の進展、産業集積の拡大が急速に進行している現在、災害の危険にさらされている人口・資産が増える一方で、十分な防災対策がなされないままに急速に地域が開発され、都市・地方ともに脆弱性が増しています。また、インドネシアでの森林火災や野焼きによる煙害のように、自国のみならず、シンガポールやマレーシアなど周辺国にまで深刻な影響を与えている現状もあります。そのような中、その土地の特性に応じた災害対策も講じられています。
ブルネイでは、首都バンダルスリブガワン市の人口の4分の1が水上集落に暮らしていますが、水上集落で火災が起きた場合、風や立地の関係で消火活動が困難になります。そのため、建屋の一部が水上に立っている水上消防署があり、車では近づけない水上集落で火災が起きた時にも対応できるよう消防船が配置されています。
また、北九州市の産学官連携で共同開発された泡消火剤が、森林・泥炭火災からインドネシアを救う手段の一つとして注目を集めています。インドネシアは、世界の熱帯泥炭地の約半分を抱えています。農業のために野焼きをした際、表面上は消火しても、泥炭は可燃性であるため、地下の泥そのものがくすぶり、これが火種となり、火災が長期化・広域化してしまいます。泥炭火災は、水だけでは消火が難しく、放水しても水が蒸発してしまい、泥中の火種まで届きません。そこで、泥中に水を浸透しやすくする泡消火剤を利用することで消火活動が効率的になることが期待されています。
それぞれの地域社会において伝統的に見られる災害対策を尊重しつつも、防災先進国である日本に対して、防災技術や制度面での貢献を期待する声が今後ますます高まっていきそうです。
(シンガポール事務所所長補佐 倉田)