シンガポールにおける兵庫県産品輸出促進プロモーションの初実施 ~食材を育む「テロワール」でワイン通に訴求~

兵庫県では、県産農林水産物や食品の輸出促進を図るため、平成27年度のミラノ国際博覧会出展を契機に、香港、EU、中東市場へと輸出プロモーション対象エリアを拡大しています。さらに、東南アジア市場における販路開拓を進めるため、シンガポールにおいて初めてシェフやバイヤー等を対象としたレストランでのイベント、一般消費者を対象とした県産食材フェアを開催しました。

シンガポール事務所では、プロモーションイベントの運営支援等を実施しました。

 

1 「テロワール」によるブランディングの試み

「テロワール(Terroir)」という言葉をご存知でしょうか。フランス語で、「場所」、「気候」、「風土」など、ブドウを取り巻く自然環境の特徴を指します。

フランスで「テロワール」がワインに個性を与えるように、兵庫県の農林水産物には摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の多様な「テロワール」によって育まれた各々の個性があるとして、食材にこだわりを持つ層をターゲットとするブランド化が試みられました。

当地のシェフやバイヤーがワインにも詳しいことから、食材の「テロワール」にも高い関心と評価能力、そして購買力が期待出来るだろうと着目したわけです。

 

2 県産食材プロモーションイベントの開催

11月22日(水)、食材とワインにこだわる日本人経営のレストラン「Pixy bar & cuisine」において、プロモーションイベントを開催しました。

対象となった商品は、六甲味噌、日本酒、明石鯛、明石蛸、牡蠣、兵庫のり等水産加工品、手延べ素麺、但馬醸造酢、丹波黒大豆加工品、黒豆茶、丹波なた豆茶、淡路島たまねぎ等、兵庫県を構成するかつての五国すべてからの食材です。

これら多彩な食材について、それぞれが育まれた「テロワール」とともに紹介する特製パンフレットを活用し、商品の持つストーリーを伝えることで訴求する取り組みが試みられました。

 

3 明石鯛における「テロワール」の事例

来星した明石市産業政策課と明石海産卸売組合協議会は、天然の明石鯛と養殖鯛を日本から空輸し、会場では比較展示に加えて刺身と焼き魚での食べ比べを実施しました。

まずは「テロワール」による訴求が行われます。海の栄養分の多くは川から流れ込みますが、通常は大半が海底に沈みます。他方、明石海峡は特殊な地形によって潮の満ち引きに伴う潮流が激しく、海の栄養分がかきまぜられます。常に新鮮な海水が流れるミネラル一杯の海域ではプランクトンが増え、鯛の食糧となる海老や蟹が豊富に育ちます。この豊穣の海でのうま味に加え、海峡の激流を回遊して育つので筋肉がしまり、歯ごたえも良いというわけです。

知識として明石鯛の特長をインプットした来場者が、その味の違いを早く体感したいと血が騒ぐのはワインと同じです。いざ食べ比べてみると、味や食感が頭で想像していた以上に違うとの驚きの声が次々に上がり、会場内は大いに盛り上がりました。

視覚と味覚の違いの理由に、特殊な地形と月の引力という壮大な背景がある明石鯛の「テロワール」。それを頭と五感で理解した来場者は大いに腹落ちした様子で、複数の商談が加速したようです。

 

 

日本の高品質食材をシンガポールまで持ってくるには、遠いが故の物流の壁があります。この壁を超えることが出来るかどうかは、その価格差に見合う高い付加価値でいかに差別化が図られ、届けたい情報が届けたい相手に伝わるかどうかに尽きます。

食材へのこだわりを持つ層にアプローチする手法として、今回は「ワインに詳しい層」というコア・ターゲットを設定し、「テロワール」という相手のアナロジーに沿って情報を発信した好事例と言えるでしょう。

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