【シンガポール事務所】シンガポールの渋滞緩和政策

シンガポールは、都市国家としての特性を活かし、渋滞緩和を実現するために独自の
政策を展開しています。今回は、代表的な3つの取り組みをご紹介します。

1.自動車所有権利証書(COE : Certificate of Entitlement)取得の義務化
 シンガポール政府は、車両台数の規制を目的に、自動車を購入する者に10年間の車
の保有と使用を認める「自動車所有権利証書(COE)」の取得を義務付け、この権利を
購入しなければ新規の自動車購入ができないこととしています。これにより国内の総
車両台数(オートバイやバス等を含む。)は、長年にわたり約100万台を維持しており、
他の東南アジア諸国で見られるような大渋滞の発生を抑制しています。
 COEは、オークション方式で毎2回販売されますが、近年落札価格が高騰しており、
2025年4(1回目)の自動車(1,600cc以下)のCOE落札価格は97,724シンガポール
ドル、日本円にすると1,000万円以上という高額で落札されています。

2.電子道路課金システム(Electronic Road Pricing)
 シンガポール政府は、道路の通行料金を自動的に徴収する制度である「電子道路課金
システム(ERPシステム)」を導入しています。特定の時間帯に渋滞が発生しやすい道
路で通行料金を課すことで、運転者が通行料金の支払いを避け別のルートを選択するこ
とにより、市街地などの交通渋滞が緩和されています。

3.オフピークカー制度(Off-Peak Car Scheme)
 平日は午後7時から午前7時のみ、土日祝日は終日制限なしで運転できる「オフピー
クカー」も、ピーク時の渋滞を緩和するための制度です。オフピークカーとして利用す
る場合は、COE価格の減額などの優遇を受けることができます。オフピークカーは赤い
ナンバープレートを付けることで区別されています。

 こうしたシンガポールの取り組みは、都市型社会の交通問題の解決策として世界中か
ら注目されています。さらに、最近では、次世代ERPシステムへの移行が進められるなど、
ますます進化を続けていくシンガポールの渋滞緩和政策に、今後も目が離せません。
                      (シンガポール事務所所長補佐 上田)


出典:
・クレアシンガポールシンガポールの政策(2024年度改訂版)」
 < https://www.clair.org.sg/wp-content/uploads/2025/03/b19dc96322d2bda2fb19eca1b57828f0.pdf 〉
シンガポール陸上交通省「Motor Vehicle Population By Vehicle Type」
 < https://www.lta.gov.sg/content/dam/ltagov/who_we_are/statistics_and_publications/statistics/pdf/MVP01-1_MVP_by_type.pdf 〉
シンガポール陸上交通省「Results for APRIL 2025 1st Open Bidding Exercise」
  < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/buying/coe-open-bidding.html >
シンガポール陸上交通省「Electronic Road Pricing (ERP)」
  < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/driving/ERP/ERP.html >
シンガポール陸上交通省「Off-Peak Car Scheme (OPC)」
 < https://onemotoring.lta.gov.sg/content/onemotoring/home/buying/vehicle-types-and-registrations/car/off-peak-car-schemes.html >