オールジャパンで中小企業のお悩み解決!

2019(令和元)年11月6日、タイ・バンコクにおいて、東京都中小企業振興公社主催の異業種交流会「T-cafe」セミナーが開催され、シンガポール事務所から職員が出席いたしました。また併せて、6月に発足した「オールジャパン中小企業支援コンソーシアム・タイランド」で中心的な役割を担うJETROバンコク等現地関係機関を訪問し、11月8日から10日まで開催された旅行博FITにて取材も行いましたのでご報告いたします。

1 「質は良いが価格が高い」

東京都中小企業振興公社タイ事務所(以下、Tokyo SME)では、東京都立産業技術研究センター(以下、TIRI)と共催で、タイに進出している都内中小企業を中心に、定期的に異業種交流会「T-Cafe」を開催しています。今回は、駐在年数の浅い方(2年以内)を対象に、「『質は良いが価格が高い』状況をどう打開するか」をテーマに開催されました。

TokyoSMEマッチングアドバイザー五井正治氏による講義では、ご自身の民間企業での経験を交えた、現地で評価される製品にするためのアドバイスが行われました。その後の意見交換会では、タイでは価格が高いとまず売れないという悩みや、コストカットのために資材を安く仕入れるためのネットワークづくりに関する悩みなどが話題にあがりました。

TokyoSMEでは企業マッチングの相談、調達先現地企業の紹介などを実施しているため、今後ますますこうした企業の抱える問題の解決に向けた連携が期待できます。

その後、訪問させていただいたTIRIバンコク支所はタイ工業省管轄の敷地内にあり、タイにおける試験機関の情報提供や技術面での相談対応を行っています。

2 オールジャパンで中小企業をサポート

2019年6月に発足した「オールジャパン中小企業支援コンソーシアム・タイランド」で中心的な役割を担うJETROバンコク、タイ工業省を訪問しました。この2か所には日本から中小企業基盤整備機構の職員が出向しています。

本事業は、タイ工業省産業振興局(DIP)の協力のもと、タイの日系中小企業を「オールジャパン」体制で支援するというものです。タイにある日系企業5500社のうち、半分は中小企業で、JETROへ寄せられる相談件数も増加しています。

具体的には、JETROがつくっている「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」(以下PF)に銀行や自治体にも参加していただき、連携促進を図ることを目的としています。企業からJETROへ寄せられる相談に対し、JETROだけでは解決できない場合、PF内のチームで対応していきます。

3 タイ工業省との連携

タイへの直接投資額は日本が金額、件数共に第1位であり、タイ工業省内には諸外国のうち唯一日本のみサポートデスクが置かれています。DIPの政策の中に、産業転換センター(ICT4.0)の設置が掲げられており、企業が技術革新により生産プロセスや製品を改善するのを支援する施設が105か所に設置されています。他にも、「Big Brotherプロジェクト」が実施されており、世界トップクラスのビジネス組織と連携することでタイ企業の成長を推進しています。今回訪問させていただいたTIRIと同敷地内にはICT施設があり、DENSOの研究施設も併設されていました。また、企業マッチング支援として、タイ政府と日本の中小機構が協力しウェブマッチングプラットフォーム「T-GoodTeck(ティグテック)」を運営しています。中小機構による日本の中小企業と大企業及び海外企業のマッチングサイト「J-GoodTeck(ジェグテック)」と連携することで、タイと日本において、海外企業に興味がある企業同士の検索、直接アプローチが可能になります。

4 Visit Japan FIT Fair 2019

冬をイメージした会場では、スノーリゾートなど冬のコンテンツを売り出している自治体が多数見られました。新潟県は十日町市と湯沢町が共同ブースを出展していました。湯沢町には、上越新幹線で関東圏からのアクセスも良いGALA湯沢スキー場を含む13のスキー場があります。十日町市は、知名度の高い湯沢町と一緒にブース出展することで、十日町市を知ってもらうと共に、着物体験やゲレンデ貸切ツアーなど独自のコンテンツを提供していました。長野県からは10自治体がブース出展しており、スキー場のみならず、温泉やお城など多岐に亘る魅力を発信していました。ゆるキャラグランプリを獲得したアルクマを知っているという人も多く、一緒に写真撮影をする人達が多く見られました。

雪以外にも、沖縄県は水の澄んでいる冬のダイビングや2~3月のホエールウォッチング、1月末に見られる桜を、埼玉県は写真映えする氷柱のライトアップなどを紹介していました。今回初出店の福岡県からは、タイへの直行便が3社から出ており、リピーター獲得のため「あまおう」などのフルーツ狩りを売り出していました。京都府のブースでは、京都市がオーバーツーリズムになっていることから、「森・海・お茶の京都」と京都市以外の地域の魅力を発信していました。

5 今後の期待

今回、印象的だったのは「悩みの共有の場の重要性」です。海外進出すると、文化・慣習の違いからストレスを感じる場面は多々あると思いますが、少人数で海外駐在されている企業の場合だとなおさらだと思います。今回出席させていただいた異業種交流会には、製造業・小売業・サービス業など幅広い業種の方々が参加されており、よりよい品質の材料を入手できる工場の情報から、現地スタッフとの関係構築まで、ざっくばらんにお話されていました。このように悩みを共有する場を設けることで、事業者の方々の負担も軽減されるのではないかと思います。

同様に、JETROの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム(PF)」は、PFの参加機関に寄せられる中小企業のお悩みを、連携して対応することで迅速に解決するものです。

クレアシンガポール事務所に日々寄せられる様々な相談についても、どの専門窓口にもっていけばよいか悩んでしまうものもありますが、各日系機関や現地機関との連携を密にし、自治体から相談を受けた際に適切な対応がとれるプラットフォームのような存在を目指していきたいと思います。

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