「地域間交流促進プログラム(シンガポール・マレーシア)」を実施

クレア・シンガポール事務所では、全国市町村国際文化研修所(JIAM)、地域国際化協会連絡協議会との共催で、2016年9月28日(水)から10月8日(土)まで、シンガポール及びマレーシアにおいて「地域間交流促進プログラム」を実施しました。
このプログラムは、急速な経済発展を続けるASEAN及びインドの各国に日本の地方自治体職員等を派遣し、政府機関・企業等の訪問や当地の人々との交流などを通じて、両国関係の現状と課題の理解を深め、今後の地域間交流促進の契機とするとともに、地域の国際化を担う地方自治体等の国際感覚の涵養を図ることを目的として、2007年度から開催しています。
2016年度は、日星外交関係樹立50周年(SJ50)の節目の年を迎えたシンガポールと、ムスリム市場をターゲットとする訪日旅行・ハラール対応の点において注目されているマレーシアを訪問しました。

1.シンガポール

シンガポールの日本語学校の学生との意見交換会

日星間の交流促進を目的として実施した、現地日本語学校の学生との意見交換会では、「ポップカルチャー」や「教育制度」などのテーマごとにグループに分かれ、両国の文化や習慣の共通点や相違点などについてディスカッションや発表を行い、両国間の今後の交流のあり方について考える貴重な機会となりました。
また、日系外食企業16店舗が軒を連ねる「JAPAN FOOD TOWN」やマリーナ・バラージなどの現地施設を訪問し、今後の自治体の海外販路開拓の可能性やインフラ整備の重要性などについて調査しました。
参考までに、以下にマリーナ・バラージで聴取した、水資源の多くを隣国マレーシアに頼ってきたシンガポールの水政策について紹介します。

〇マリーナ・バラージ

降水量は多いものの、国土が狭く保水力が乏しいため、マレーシアから水を輸入してきたシンガポールは、すべての事業に優先して水政策を展開してきました。乏しい水資源を最大限に活用するため、「①貯水、②下水再生、③海水淡水化」の3本柱で政策を推進しています。下水再生については、シンガポールでは下水道は完全に分流化されており、2003年には下水を高度に処理し、上水に再利用する「ニューウォーター」が誕生しています。現在は3つの「ニューウォーター」生産施設が稼働しており、シンガポールにおける水需要の30%を占めています。今後は、水需要に対し80%をこの「ニューウォーター」と海水の淡水化で賄っていくことを目標としています。
この「ニューウォーター」を飲むよう促された参加者の方たちは、少し躊躇しながらも口にすると、問題なく飲めると少し驚いた様子でした。

2.マレーシア(クアラルンプール・ジョホールバル)

マレーシアでは、首都クアラルンプールとマレーシア第2の都市であるジョホールバルを訪問しました。マレーシアでの行程では、マレーシアの石油及びガスの供給を行う大手国営企業のペトロナス社やムスリム専門訪日旅行会社などの現地企業、味の素や日本通運などの日系企業、またイスラム開発局やクアラルンプール市役所などの公的機関など、様々なジャンルの団体を訪問し、マレーシアの経済情勢や企業戦略、訪日インバウンドにおける連携やハラール対応の重要性などについて理解を深めることが出来ました。
これらの訪問先の中でも、特に参加者の関心が高かった、ハラールに関する訪問先であるイスラム開発局で聴取した内容を紹介します。

〇イスラム開発局(通称JAKIM)

JAKIMは、マレーシア政府機関で、イスラム法の制定・標準化、イスラム法による統治の調整、イスラム教育の適正化と発展に係る業務を主に所管しており、ハラール認証を付与する機関でもあります。ハラール認証の手続きは、企業からJAKIMへの申請に始まり、JAKIM の宗教・技術審査及び現地調査とJAKIM内での協議を経て合格した製品等が認証となります。認証を得ると、2年間、認証マークを表示できることになります。また、ハラールの認証機関は、世界に200団体以上存在していますが、政府系機関が認証を行っているのはマレーシアのJAKIMのみであり、そのため最も権威が高いとされています。日本国内にも多数の認証団体がありますが、輸出する際は、その国ごとに有効な認証を取得する必要があります。しかし、ハラール認証には相互認証制度があり、日本国内では現在2団体がJAKIMのハラール認証と相互認証を受けています。このように、ハラール認証といっても、それぞれの国ごと、また認証機関ごとに異なっているので、ハラール産業の活性化には、この認証スキームの一元化や相互認証の拡充が今後、世界的な課題となるものと考えられます。

最後に、クレア・シンガポール事務所では、自治体のニーズに沿った効果的な研修プログラムの実施を検討しており、今後も日本の自治体と各国とのネットワーク構築のための支援をしてまいります。本プログラムで訪問した機関・企業等の情報提供等も随時行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

【プログラム日程】

月 日 プ ロ グ ラ ム 内 容
10/1
[土]
・結団式
10/2
[日]
【シンガポール】

・星日文化協会講演及び意見交換会
・シンガポール国立博物館(歴史文化)
・ジャパン・フードタウン(日本の外食企業の展開状況)

10/3
[月]
【シンガポール】

・シティギャラリー(都市政策)
・マリーナ・バラージ(水政策)
・リゾートワールドセントーサ(観光・IR)

10/4
[火]
【シンガポール⇒クアラルンプール】

・クアラルンプール市役所(首都行政機関)
・独立広場/旧連邦事務局ビル/国立モスク(歴史文化)
・日本留学経験者との意見交換会

10/5
[水]
【クアラルンプール】

・ペトロナス社(マレーシアの経済動向)
・在マレーシア日本国大使館
・Feel Japan with K(ムスリムツーリズム)
・環境見本市「IGEM2016」視察(自治体の国際協力)

10/6
[木]
【クアラルンプール・プトラジャヤ】

・味の素工場(ハラール生産)
・イスラム開発局(ハラール認証)

10/7
[金]
【ジョホールバル⇒シンガポール】

・イスカンダル開発公社(経済特区)
・ヌサジャヤ・テックパーク(工業団地)
・タンジュンペレパス港(港湾政策)・マレーシア日通(ハラール物流)
・スルタンアブバカールモスク(歴史文化)
・解団式

【お問い合わせ先】

クレアシンガポール事務所
TEL:+65-6224-7927
FAX:+65-6224-8376
E-mail:info@clair.org.sg

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 (新海所長補佐 愛知県東海市派遣)