2020 年2 月28 日(金)に、HIS 東南アジア・南アジア統括営業本部支店長会議に併せて、鹿児島県が観光商談会の機会をいただきました。鹿児島県派遣職員が同行支援を行いましたので、その模様を報告します。
1.タイは100 万人規模の訪日市場へ
2018 年、タイの訪日旅行者数は、前年比14.7%増の113 万2,160 人と、ASEAN で初めて100 万人を突破し、2019 年は131 万人となっています(訪日外客数JNTO 推計値)。旅行先は、東京、大阪、北海道といったゴールデンルートが主流ですが、訪日旅行のリピーターは約7割を占め、近年、地方への関心が高まり成熟したインバウンド市場となっています。
2.タイから九州へのアクセスと鹿児島県のインバウンド
①タイから九州へのフライト
タイから九州へは、2019 年10 月30 日より福岡~バンコク(スワンナプーム国際空港)線がデイリー運航し、福岡~ドンムアン空港もライオンエアとエアアジアX が運航しています。タイからは、台湾や韓国からの中継便で九州各県を訪れるケースも多く、九州の各自治体では、中継便を利用しての誘致活動も盛んに行われています。
②鹿児島県のインバウンド
鹿児島県には、香港、台湾(台北)、韓国(ソウル)、中国(上海)の4路線の直行便がありますが、シンガポール、タイ、ベトナムで定期的にプロモーションを行う中で、2020年7月から5路線目の国際航路となるハノイー鹿児島直行便(ベトジェットエア)が週2往復で就航する予定です。直行便を活用した鹿児島へのインバウンド数は、2018 年度の県観光統計で、香港が36%と最も多く、以下、台湾、韓国、中国の順となっています。このような中、タイは訪日旅行者の多い有望市場として、昨年のタイ-鹿児島間の往復チャーター便をはじめ、FAM ツアーやBTS 駅での広告、女子旅を対象とした商品造成・販売を行うなど、プロモーションを展開しています。
3.商談会で鹿児島の魅力をPR
今回の商談会は、自治体は鹿児島県のみで、その他、鹿児島県内のホテルなど7事業者が参加しました。HIS バンコク支店の現地スタッフも参加した鹿児島県の観光プレゼンテーションでは、離島も含めた四季ごとの県内各地の魅力をPR。特に、砂蒸し温泉や観光列車 肥薩おれんじ鉄道、ギネス登録された世界一大きな桜島大根掘りや、世界一小さな桜島小ミカン狩りなどのアクティビティをはじめ、種子島の宇宙ロケット発射基地、また、冬季限定のものとして、出水市で見られるシベリア鶴の北帰行など、鹿児島にしかない観光コンテンツを存分に紹介しました。HIS バンコク支店のタイ人スタッフからは、「こんな観光地があるとは知らなかった、ぜひ行ってみたい。」と関心の高さが伺え、タイ人目線での商品造成のアドバイスをいただきました。プレゼンテーションの後は、HIS 各国支店長へのBtoB 商談会を実施。県内事業者は、熱心に各社のPR を行い、実りある情報交換の場になったようです。
4.インバウンド回復に向けて
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人が減少し大きなダメージを受けている観光業においては、インバウンドの対策に躊躇している事業者の方も多いと思います。感染防止に全力を注ぐ一方で、いつまでこの状態が続くのか、想定が難しい状況にあります。HIS の各国支店長からは、「ASEAN では依然として日本への関心は高く、現在の状況が終息したら、SARS の後V 字回復した時のように、訪日旅行への喚起が再び高まるのではないか。」との希望的観測が聞かれました。インバウンドの落ち込んでいる時だからこそ、まだ知られていない観光地の磨き上げや、事態が終息したらぜひ行ってみたい、と思ってもらえるような取組が、今後のインバウンド対策にとって重要になると感じた次第です。一時的に訪日旅行へのモチベーションが下がっている状況の下、日本政府は3月5日に開かれた未来投資会議において、新型コロナウイルス収束後に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、官民一体で観光需要喚起を図る「観光回復キャンペーン」を実施する方針を示しました。インバウンドの回復に向けて、観光客の受け入れ環境整備など今できることに取り組み、日本各地の魅力を発信する機会になることを期待しています。