【シンガポール事務所】意外と多い!?シンガポールの緑

 筆者はこの4月からシンガポールに赴任となりましたが、人口密度が非常に高く、
高層ビルが立ち並ぶといった渡星前に持っていたイメージとは異なる風景が1つあります。
それは自然、言ってみれば緑の多さです。街の中心部にも街区公園、街路樹のほか、
壁一面が植物で覆われているビルなど、建物のデザインと上手に緑を組み合わせている
建物も散見されます。
自然に関する観光資源の代表格としてはスーパーツリーで知られるガーデンズバイザ
ベイや世界遺産となっているボタニックガーデンがありますが、最も驚いたのが、
中心部から電車やバスで10分程度の距離にハイキングも可能な公園が複数設置されて
いることです。先日、こちらで知り合ったハイキングを趣味としている日本人の方々に
同行させていただいたところ、山ほどの高さではありませんが、適度なアップダウンが
ありながら豊かな緑の中を約3時間、距離にして約10キロのウォーキングを楽しむこと
ができました。同時に、時折木々が開けたところから垣間見えるビル群との距離の近さに
不思議な感覚を覚えました。
では、このような豊富な緑がシンガポールに元々存在していたのかといえば、実はそう
ではありません。1965年の建国当時、狭い国土面積、高温多湿、特別な資源がない、
といったシンガポール特有のマイナス要因に加え、路上にもごみが散乱していた国内の
状況を打破するため、「ガーデンシティ」へと変革する政策を銘打ち、60年間に渡り、
植樹や人々への教育、罰則を含む法整備を行ってきた結果が現在の緑の多さにつながって
いるのです。また、この土地に適合する植物が少ないことから、土壌改良や海外からの
木の輸入も進められています。これは、当時の政府が島を清潔で魅力的な状態に保つこ
とが、人々の暮らしだけではなく、観光客や外国からの投資を呼び込むために必要だと
考えたためです。
この政策は今も続いており、政策名を「シティインネイチャー」として2020年から2030年
までにシンガポール全土でさらに100万本の植樹やすべての家庭が徒歩10分以内で公園に
辿りつくように更に緑化が進められています。
 緑化政策と考えると自然環境保護や景観形成といった面で捉えがちですが、経済面と
の相乗効果を狙い、実際に成功させていることは日本の地方自治体の参考になりそうです。
 ハイキングに話を戻しますと、筆者が今回歩いたのは割と歩道が整備されている
コースでしたが、林の中を歩くいわゆるジャングルもあるようです。皆様も来星の際は
ぜひチャレンジしてみてください。
   
                    (シンガポール事務所所長補佐 佐山)
(参考資料)
・シンガポールの緑化政策の概要
https://www.clair.org.sg/j/wp-content/uploads/2018/03/rep_232-1.pdf

・National Parks Board
https://www.nparks.gov.sg/

・National Library Board
https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/article/straitstimes19670513-1.2.87.2
https://eresources.nlb.gov.sg/newspapers/digitised/article/straitstimes19670512-1.2.20

・Singapore Statutes Online
https://sso.agc.gov.sg/Act-Rev/PTA1975/Published/19910301?DocDate=19870330

・Singapore Green Plan 2030
https://www.greenplan.gov.sg/targets/