シンガポールは、東京23区より少し大きい約734平方キロメートルの面積に、約604万人が暮らす都市国家です。
国土が狭く、河川や湖などの水資源も限られているため、降雨だけで生活用水や産業用水をまかなうのは
難しい状況です。そのため、水の安定した供給は、国家の安全や経済活動に直結する大切な課題となっています。
こうした課題に対応するため、シンガポールでは「Four National Taps(4つの蛇口)」と呼ばれる水政策を
行っています。
・1つ目は国内の貯水池です。現在国内に17カ所あり、水の供給源であると同時に、市民の憩いの場としても
活用されています。
・2つ目はマレーシアからの輸入水で、長期契約に基づき安定的に供給されています。
・3つ目はNEWaterと呼ばれる再生水です。下水処理後の水を高度に浄化して飲用可能な水にするもので、
この処理技術には日本企業も貢献しています。
・4つ目は海水淡水化で、海水を飲料水として利用できるようにする方法です。ただし淡水化には多くの
エネルギーが必要となるため、電力消費を減らしながら効率的に水を生み出す技術開発にも挑み始めています。
これらはすべて「シンガポール公益事業庁(PUB:Public Utilities Board)」が一元管理しており、
節水の推進や再生水利用などと組み合わせて水政策を進めています。
こうした取り組みにより、シンガポール政府は水不足のリスクを大きく減らすだけでなく、NEWaterや
淡水化技術を海外に発信しています。限られた国土という制約を逆手に取り、持続可能で自立的な水政策を
進める取り組みは、世界が直面する水資源課題への有効なヒントとなっています。
(シンガポール事務所所長補佐 早日渡)
【参考文献】
< https://www.pub.gov.sg/AboutUs >
