シンガポール政府が1月22日に発表した「未来経済におけるスキル需要に関する報告書」によれば、従来「クリエイティブでない」とされてきた職業においても、今後は創造的なスキルを身に付ける必要があると指摘しています。例えば、ソフトウェア開発者には、利用者が直感的かつ視覚的に操作しやすいアプリケーションをデザインするスキルが求められます。また、飲食店の経営者には、他店との差別化を図るためのブランドデザイン能力が必要とされています。このように、さまざまな職業で創造的なスキルを持つことの重要性が高まっ
ていることが報告書で示されました。
労働市場が日々変化する中、労働者が柔軟性と競争力を獲得できる社会を構築するため、シンガポール政府は生涯学習の振興に努めています。その中心となるのが、2015年に開始された「SkillsFuture」プログラムです。このプログラムは、国民にスキル向上の機会を提供し、個々人がキャリアを主体的に形成できるよう支援するものです。
本プログラムでは、25歳以上の国民に対し、政府や企業が実施する研修プログラムの受講料として利用できる助成金を500シンガポールドル(約57,000円)付与しています。
また、ワンストップ型のオンラインプラットフォームを整備しており、受講できるコースを閲覧できるほか、助成金の申請や自身のスキル・学歴を登録して求人に応募することができます。例えば、AIに関する講座だけでも1,000を超えるコースを提供しており、基礎的な内容から実践的・発展的な内容まで、幅広い学習ニーズに応えています。
2023年には、シンガポール国民の約10%に当たる52万人が本プログラムを利用しており、その中でも、40歳以上を対象とした中堅社員向けのキャリア支援助成金の受給者が約40%を占めており、働き盛りの世代のスキルアップへの関心が特に高いことがうかがえます。
政府だけでなく、教育機関や地域社会も生涯学習の振興において重要な役割を果たしています。大学やポリテクニック(日本の高等専門学校に相当)は、産業界のニーズに対応するコースを提供し、修得したスキルが実際の職場で活かせるよう工夫しています。また、地域の公共図書館では、生涯学習に関連する講演会やワークショップが定期的に開催され、市民が気軽に参加できる環境が整えられています。
シンガポールは天然資源が乏しい一方で、人的資源への投資によって現在の発展を遂げました。この歴史を踏まえ、政府は「学び続ける社会」の構築を進め、個人のキャリア形成や生活の向上を支援しています。これらの取組は、今後も変化する経済環境に適応し、シンガポールのさらなる発展の基盤として機能していくことが期待されます。
シンガポール事務所 所長補佐 西本
<参考文献・引用文献>
・未来経済におけるスキル需要に関する報告書
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762882&c=52219&d=a05a
・シンガポール人材開発省「SkillsFuture運動」
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762883&c=52219&d=a05a
・SLILLSfuture
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762884&c=52219&d=a05a
・MySKILLSfuture
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762885&c=52219&d=a05a
・SLILLSfuture Annual report 2023/2024
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762886&c=52219&d=a05a
・Training Partners Gateway
https://a16.hm-f.jp/cc.php?t=M762887&c=52219&d=a05a