12月12日、当事務所は公益財団法人浦安市施設利用振興公社が実施したシンガポールスポーツハブの視察及びスポーツシンガポール(旧シンガポールスポーツカウンシル)との意見交換にあたり、アポイント調整及び同行支援を行いました。
今回聴取した、シンガポールのスポーツ振興政策に関する考え方や取組を、以下に紹介します。
1 Active SGの取組
シンガポールスポーツハブは、旧スタジアムの老朽化に伴い新築された開閉式の屋根を持つナショナルスタジアムを核とした一連のスポーツ施設群を指しますが、その中にシンガポールのスポーツ振興政策実施機関であるスポーツシンガポールの本部があります。
2014年に開始された「Active SG」という国民のスポーツ参加促進事業により、ストレスと不健康な食事、運動不足が国民の寿命を短くする要因と考え、様々な取組を進めています。登録するとすぐにスポーツ施設で利用できるS$100のデポジットを付与するほか、慢性的な運動不足に悩まされているタクシー運転手の勤務交代スポットとしてシンガポールスポーツハブを活用してもらうことで、出勤前後のスポーツ利用促進に繋げています。
2 ビッグデータによるマーケティング分析
シンガポールは「Active SG」というスマホアプリを開発、スポーツ施設の利用料決済を可能とするとともに、どんな属性の国民がいつプールを使い何時間ジムにいたかなどのビッグデータを収集し、最新テクノロジーによるマーケティング分析を行っています。今後、自治体のスポーツ施設の運営に関しても、プロダクトアウトではなくマーケットインの考え方が施設の効率的な利用という観点から重要になっていくでしょう。
3 「働き方改革」の先にあるもの
昨今、日本では慢性的な長時間労働の見直しなど「働き方改革」が進行しています。シンガポールは都市国家で人口が少ないこともあり、以前から国民の「生産性」向上に注目してきました。スポーツを通して協調性やリーダーシップ資質、逆境に立ち向かう力が養われますが、これを効果的に多民族国家故に必要とされる団結力や国民の業務遂行能力の涵養に結び付けているところが着目すべき点です。
日本の自治体が「働き方改革」を進める上で、次のステージでは「新たに発生する余暇の過ごし方」が問われることとなるでしょう。余暇を利用してスポーツを楽しみ、健康増進は勿論のこと、潜在的な能力開発ひいては生産性向上を図るというパラダイムシフトを考えるとき、シンガポールのスポーツ振興政策は多くの示唆を与える事例となり得ると考えます。
詳しくは、後日発表予定のクレアレポート「シンガポールのスポーツ振興政策」をご覧ください。