クレアシンガポール事務所は、2020 年 10 月 20 日及び 22 日にオンラインで開催された、フィリピン地方行政学院( LGA )主催のセミナーにて、フィリピンの自治体職員等を対象に、日本の自治体職員等が講義を行いました。 LGA は、フィリピンの自治体に対して研修等を実施している政府機関です。
今回のセミナーは、約1か月に及ぶもので様々な行政分野に関するセッションが連日行われましたが、当事務所は、 20 日開催の防災に関するセッションと、 22 日開催の観光に関するセッションにおいて、日本の自治体職員等を講師として派遣しました。
フ ィリピンは、地理的条件から、地震、台風、洪水、火山の噴火など多くの自然災害が発生しやすい国です。そのため、災害に対する備えや管理体制の構築が、自治体に求められています。
また、観光はフィリピンの国家経済における重要かつ主要な要素です。 2019 年には外国人観光客数が 826 万人と過去最高を記録するなど、国内外からの観光客数の増加が、地域の発展を促進しています。しかしながら、 COVID -19 の世界的な感染拡大は、フィリピンの観光に甚大な影響を及ぼしているのが現状です。
今回のセミナーでは、そのようなフィリピン の現状を踏まえ、日本の3つの自治体等の職員に講師を依頼し、それぞれの自治体の先進的な事例を紹介いただきました。
20日開催の「より良い地方自治のための防災と災害管理」をテーマとしたセッションでは、福岡県職員に「災害時における福岡県の役割と対応」について講演いただきました。
22日開催の「地域経済を復興させる観光政策」をテーマとしたセッションでは、北海道職員に、北海道胆振東部地震後に実施した観光政策と、コロナ禍における観光業への支援策について講演いただきました。また、気仙沼市 の(一社)気仙沼地域戦略の職員には、東日本大震災後に、水産業に次ぐ第二の基幹産業として観光業に力を入れ始めた同市の取り組みについて、講演いただきました。
セミナーは、Zoom ミーティングと Facebook Live によるオンライン開催だったため、当日の受講者数は把握できませんでしたが、事前登録時点で、フィリピン全土の自治体から両日合計で約 3,900 名に申込みいただきました。チャット欄に参加者からのコメントが途絶えることなく寄せられる光景は、非常に印象的でした。感想やコメントだけでなく、質問も多く寄せられ、参加者の関心の高さが窺えました。
質問のいくつかをご紹介しますと、
〇(福岡県に対して)コロナ禍のようなパンデミック時において、台風をはじめとした災害にどのように準備・対応しているのか
〇(北海道に対して)実施した割引のキャンペーンにおいて、特に深刻なダメージを受けた地域に対して、追加のキャンペーンを実施するような取り組みを実施したか
〇(北海道に対して)コロナ禍において観光を推進していくにあたって、どのような問題に直面しているか
〇(気仙沼地域戦略に対して)コロナ禍からの観光業の復興に向けて、住民をどのように巻き込んでいるのか
上記のように寄せられた質問の多くはコロナ禍に関連するものであり、フィリピンの自治体にとって、コロナ禍から復活するためのヒントや知見を得ることのできる機会になったのではないかと感じました。
今回のセミナーは、クレアシンガポール事務所にとって海外の関係機関と連携して実施した初めてのオンライン開催であり、手探りな部分もありましたが、講師が国外へ出張することなく、オフラインのセミナーと比較してかなり多くの方々に視聴いただくことができたという点で、今後の事業実施の選択肢の一つとして有効なものであると実感しました。
今後も当事務所では、両国における自治体同士の交流や協力を支援してまいります。