クレアシンガポール事務所は2018年12月3日(月)から6日(木)まで、インドネシア・スラバヤ市からの要請に基づき、自治体国際協力専門家派遣事業を実施しました。
この事業は、海外の自治体などの行政資質と技術力の向上、人材の育成に資するとともに、日本の地方自治体と海外の地方自治体との友好協力関係を強化するため、日本の自治体職員を現地に派遣し、講義や実技を通して日本の地方自治体が持つ行政のノウハウを伝えるものです。
スラバヤ市はジャワ島東部に位置する東ジャワ州の州都で、人口約288万人のインドネシア第2の都市です。周辺都市からの通勤者通学者も多く、昼間人口は約500万人と言われており、人口の集積及び都市化が進んでいます。
スラバヤ市では、都市化の進展とともに利用できる土地にも限りが出てきています。このため、医療施設のほとんどは専用の排水処理施設を設置できておらず、そこからの排水は衛生基準を満たさないまま、河川に排出されています。
このような背景から、同市から「医療施設からの排水処理」分野に関して専門家の派遣要請があり、同市の姉妹都市である高知県高知市の職員を派遣しました。
今回の事業では、現地医療施設の現地視察のほか、スラバヤ市職員・現地医療施設職員ら約40人を対象に、講義・実技研修で高知市の医療施設における排水処理方法を紹介しました。
はじめに、スラバヤ市が管理する病院と公設診療所の現地視察を行いました。病院とほぼ全ての公設診療所は排水処理施設が導入済みとのことであったため、今回の視察では導入設備の設計や処理能力などについて確認しました。
いずれも設備も設計や処理能力、水質には問題はなかったものの、各処理工程の機能・役割について現場職員の知識不足が見られたため、この後の講義にはより現場目線での内容を盛り込むこととしました。
講義は、スラバヤ市が求める2つテーマ「担当職員の医療排水処理技術のスキルアップ」「習得した知識を現場で役立てる」に沿って、次の4つの内容で行われました。
① 日本の医療機関の排水処理システムの概要
② 医療機関から発生する感染性廃棄物(液体)の排水処理方法
③ 医療機関から発生する非感染性廃棄物(液体)の排水処理方法
④ 医療機関からの排水で水質事故が起きた場合の対応方法
参加者からは、予定時間を過ぎるほどたくさんの質問があったほか、排水処理施設外で処理すべき医療廃棄物の処理の仕方についても質問が及ぶなど、現場で苦慮している様子がうかがえました。
実技研修では、「透視度」による水質管理方法を紹介しました。これは、透明な管に試料(水)を入れて上部から透視し、水質の清濁を確認するものです。
今回は必要な機材である「透視度計」を現地で入手できなかったため、現地で容易に入手できるビーカーを用いた応用例を紹介しました。
参加者にとって、透視度で水質管理が行えることが驚きであったようで、実技研修は非常に好評でした。
専門家からは「日常排出されている水を見ることが水質管理のスタート」「その国、その施設にあった水質管理方法を確立すると良い」とアドバイスがありました。
今回の事業では、高知市の医療施設における排水処理方法をスラバヤ市に紹介しました。この専門家の派遣を契機に、スラバヤ市での排水処理技術が一層高まるとともに、高知市とスラバヤ市との交流が進展することを願ってやみません。
クレアでは、アセアン各国及びインド・スリランカの自治体の要請を受けて、農業、環境、都市計画などの32分野で、日本の自治体から専門家の派遣を実施しています。専門家として自治体職員の派遣を派遣することは、受入国への知識や技術の伝達だけではなく、自治体にとってもアジア諸国との有意義な情報交換の場及び将来の交流のきっかけとなります。また、海外に対する自治体PRにもつながることから、自治体におかれましては、ぜひ本事業の活用をご検討ください。