1 シーサケート ~クメール遺跡の残る場所~
シーサケート県は面積:8,840 km²、人口:約140万人。スリン県、ローイエット県、ヤソートーン県、ウボンラーチャターニー県と接し、タイ東北部(イーサーン)に位置しています。カンボジアとの国境を有し、クメール遺跡も数多く残っています。今回CLAIRが専門家を派遣した地域は、面積:約37k㎡、人口:約4万人のシーサケート郡です。カンボジアからの影響を受けた独自文化とその奥深い歴史が魅力の街です。辛いイーサーン料理が特徴ですが、現地の人々は皆優しく温かいホスピタリティに溢れていました。 *シーサケートとは「美しい髪」という意味です。
2 なぜ、食品衛生分野なのか? -コレラの発生も!?-
シーサケート郡は現在、2016年を目標達成年とした食品安全プログラムを実施中です。郡内の6つの市場や220のレストラン等で行った検査によると、細菌に汚染された食品を使用している店舗が今でも存在し、食品業者や住民の多くが間違った知識のまま調理を行っています。また、食品衛生の知識が不十分であることに起因する下痢や体調不良、健康意識が低いために発生する健康被害が起こっています。こうした状況を改善すべく、愛知県健康福祉部保健医療局生活衛生課の水野浩子氏が専門家として派遣されました。
3 充実したカリキュラム! - 課題認識 × 講義・セミナー × 議論 -
今回の専門家派遣事業は8日間という比較的長い期間で行われました。
(1)開会式及びシーサケート郡職員による現状のプレゼンテーションから始まり、
(2)公営市場・民間市場への実地調査、
(3)郡の幹部や関係者との意見交換会、
(4)屋台や各レストランへの実地調査及び現場指導、
(5)食品業界関係者・一般市民・病院関係者等を集めた3日間のセミナー
(6)今後に向けた専門家からの提案やディスカッション、模擬指導等、
非常に中身の濃い充実した内容でした。専門家と郡の衛生局の職員は指導する側・される側という関係ではなく、同じ目線で同じ問題に向き合いました。
4 現地目線のセミナーや実地指導! -全てはシーサケートの食の安全の為に-
今回のプログラムの特徴は、シーサケートの衛生局のメンバーと専門家が一つのチームとなり、一緒にプログラムを作っていったことです。
市民向けのセミナーは専門家の講義に加え、衛生局メンバーによるタイの手洗い体操指導、手洗いチェッカーを使った実演、グループワークの実施など、双方向的なものでした。初めて見る手洗いチェッカーにスタッフも興奮気味でしたが、すぐに使い方を覚えていました。毎回140人規模の市民や関係者が集まり大好評でした。専門家が講義をするだけでなく、現地スタッフにも役割を与え、次回は全て彼らだけで市民向け講習が出来るように工夫しました。
また、実地検査においては、日本の検査器具を衛生局メンバーが実際に使用しながら調査し、見るべきポイント、検査方法を細かく伝えました。店を見て回る事に終始せず、衛生管理状態に合わせグレード評価を行い、アルコール消毒液を配り使い方を指導するなど、次に繋がる実地調査を行いました。専門家が帰った後もシーサケートの職員自身で指導の継続が出来るよう、現地の実情にあわせたノウハウを提供しました。
5 愛知県 × 民間企業 × CLAIR -3者による協力!-
今回多くの方の協力を得る事ができました。愛知県が手洗いチェッカーや放射温度計等を寄贈し、事業の趣旨に賛同したタイに工場を持つ日系企業が消毒用アルコールの詰め替えボトルを無償提供しました。アルコール消毒液や噴霧器、ペーパータオル等はクレアが提供しました。全て本事業に欠かせることが出来ないもので、シーサケート郡より大変感謝されました。
6 現地スタッフの糧となる指導!
シーサケート郡は衛生状態がかなり悪いのではありません。確かに、日本の基準と比べれば改善余地があります。手洗い設備の不十分さ、市民の知識不足など一例です。
しかし、現地の文化や生活にあった衛生指導が大切です。今回の事業で良かった点は、専門家の技術や知識を現地のスタッフに体験を通じて直接伝えることが出来た点です。現在、彼らは専門家が指導した知識を基に、日々実情に合わせて業務をしています。食品衛生に終わりはありません。今回を経て現地がどう変わっているのか、来年のフォローアップが期待されます!